僕はとあるきっかけで平成30年度の宅地建物取引士(通称:宅建士)の試験を受け、一発合格を果たした。
当時はまだ、上場企業の子会社で代表取締役社長を勤めながら、勉強時間を捻出したので、忙しいサラリーマンの方でも実践可能な方法だ。
これから宅建士を目指す方のために、僕の一発合格勉強法を参考にしてもらえたら幸いだ。
勉強時間の目安
人によって意見は違うようだが、僕の調べた限りでは、
最少で100時間、最大で400時間
と幅があった。
ちなみに僕の実際の勉強時間は
185時間10分
だった。
Studyplusという勉強支援アプリのストップウォッチ機能を使って計ったのでかなり正確な数字のはずだ。
だが、実際185時間10分の勉強が必要だったのか、終わってから振り返ってみると全然そんなことはなく、おそらく半分の90時間程度でも合格は不可能ではなかったと思う。
しかし宅建は年に一度の一発勝負だ。
「当日どんなに体調が悪くても、10回受ければ10回受かる!」
と思えるくらいまで、念には念を入れてやり込んだ。
ちなみに難関国家試験の公認会計士などは3000時間とか4000時間とか言われ、司法試験に至っては数千時間から1万時間の勉強が必要らしいので、それに比べれば頑張ればなんとかなりそうな気がしないだろうか?
必要な教材
必要なのは下記の3つ。
- 宅建の参考書
- 宅建の問題集
- 民法の解説書
実際に僕が使った教材を載せておくので参考にしてほしい。
毎年法改正などで新版が出ていたりするので、ちゃんと調べて最新のものを買ってほしい。
大まかな流れ
まずは参考書から
まずは参考書を一読する。
ここで「全部覚えよう!」などと気合を入れすぎると挫折する可能性が高い。
できるだけ理解に努めながらも、まずは読破することを最優先の目標にしよう。
参考までに、僕は初見で読み終えるのに14時間13分かかったようだ。
次に民法
ここの順序は好みが分かれるかもしれない。
とりあえず先に力試しのために問題集を解いてみたい、と思う方もいるだろう。
その程度の組み換えはどちらでも問題ない。
僕は食べ物でも嫌いなものから先に食べるタイプの人間なので、最も面倒くさい民法から終わらせた。
先に言っておくが、民法のボリュームは恐ろしく、日本の全法律の中でも群を抜いて範囲が広い。
宅建に出題されるのはその中のほんの一部なので、あくまで「触れる程度」で大丈夫だ。
それなら飛ばしてしまってもよいか?というとそうもいかない。
宅建の試験範囲に出てくる法律(宅地建物取引業法、建築基準法など)は特別法と呼ばれ、一般法である民法を補足したり上書きしている性質を持っている。
だからベースの民法のことを全く知りません!だと、理解が難しくなる場合も出てくるからだ。
一つ例を出すと、民法では「賃貸借(物の貸し借り)」について規定があり、存続期間は最長で20年までとされている。
貸したものがいつまでも返してもらえないと、「貸す側」が困るよね?という観点で決められた法律だ。
しかしこれを土地の貸し借りにそのまま当てはめたらどうだろうか?
20年後に返さなければいけない土地に建物を建てるなんて、怖くて誰も出来ない。
なので借地借家法という特別法によって、土地は「最短で30年。最長は上限なし。」と決められていたりする。
民法とは逆の観点で「借りる側」が困らないようになっているのだ。
このように流れで覚えると、細切れの知識よりも理解が深くなる。
また、そもそも特別法に特段の規定がない部分は民法のルールがそのまま生きている。
だからある程度は知っておきたい。
参考までに、僕は読み終えるのに18時間20分かかっている。
最後に問題集
ここまで参考書と民法で32時間33分。
僕の総勉強時間は185時間なので、残り150時間以上は問題集を解いていたことになる。
闇雲に解いても問題ない。
勉強の「効率」ばかり気にして「量」がこなせないよりは、多少非効率でも力技で、闇雲に「量をこなす」方が重要だ。
とはいえ、いくつかおさえておきたいポイントがある。
2年分は後のために取っておく
紹介した問題集は過去問が12年分収録されているが、出来れば2年分、最低でも1年分は解かずに残して置くことをおすすめする。
おそらくだが、問題集を1周して解説を読むだけでは合格は難しいと思われる。
最低2周はしたい。
ちなみに僕は3周した。
で、2周、3周と解いていくと、だいたい自分が何点くらい取れそうかイメージが出来てくる。
そうしたたときに、ふと思うことがある。
「これは問題を覚えてしまっただけなのでは?」
「初見の問題でも同じだけ点数が取れるだろうか?」
そのときに、1周目で12年分やり尽くしてしまっては後の祭り。
だから2年分は残しておくのだ。
僕はまず10年分を2周し、残しておいた11年目を一回。
3週目は10年分の3回目と、11年目の2回目。
最後に総仕上げとして残してあった12年目を解いた。
ここで合格ラインギリギリくらいしか取れないようだと黄色信号。
本番は模試の8割、9割くらいしか得点できないと考えたら40点は超えておきたいところ。
危うそうなら念の為もう一周するなり、対策しておいたほうがいいだろう。
理解出来ない部分は参考書に戻る
問題集を解いて答え合わせをすると理解できていない部分が必ず出てくる。
そんなとき一番楽なのは、その問題の解説文を読むことだ。
なぜ間違えたのか、ピンポイントで理解できる。
ここで注意したいのは、解説文はピンポイントで理解できる反面、「理解できた気になっているだけ」という事がある。
関連する他の知識が理解できていない事が原因で間違えてしまった場合、解説を読むだけでは本当に理解したとは言えない。
こういう場合、特に最初の1周目に取り組んでいる場合は、必ず参考書の該当ページを「理解している部分も含めて」一通り読み直すことをおすすめする。
出来れば該当の「章」全体を読み返すくらいでも良い。
そうすることで、前後の知識と知識がつながってきて、より深く記憶の定着につながる。
参考書と問題集はページ数も多くかさばるので、電車の中などで2冊を行ったり来たりするのは正直面倒だ。
だがここは、めんどくさがらずにやったほうがよい。
ストップウォッチで2時間計りながら解く
1周目はほとんど間違いだらけだし、解説や参考書と行ったり来たりする必要があるので、1問解いては答え合わせ、解説文、のような進め方でもOKだ。
ただ2周目くらいから、本番と同じく2時間以内に50問全部解く、という形式を取り入れたほうがいい。(統計問題は過去問には載っていないので実際は49問)
2時間ぶっ続けを本番で初めて体験するようでは、本来の力は発揮できない。
答え合わせや解説は、翌日に回してでも2時間ぶっ通しで解くことに意味がある。
最初は2時間以内に解ききれない、なんてことある。
出題範囲、特に民法の範囲では、いくら考えても100%自信を持って答えられないような難解な問題も出題される。
そういう問題に時間をかけすぎて、簡単な問題に手がつけられなかったら最悪だ。
そのあたりの感覚は、普段から本番と同じ形式で解いていくことで身についてくるはずだ。
勉強時間を計ろう
例えばあなたがこれから200時間勉強するとして、休みなく毎日2時間取り組んだとしても100日かかる。
3ヶ月以上だ。
この期間、ペースを保ちつづけるのは大変むずかしい。
マラソンだって今自分がどれだけ走ってきて、後どれくらい走らないといけないのか、把握せずに走っていたら辛くないだろうか?
心が折れて途中で挫折することもあるだろうし、オーバーペースでバテてしまったり、逆にサボりすぎていつの間にか本番間近!という事もあるだろう。
自分の今の立ち位置を知り、ペース配分するためにも勉強時間は計ることをおすすめする。
僕はスタディサプリというスマホアプリを使った。
もう一つ、時間を計ることで良い効果があったのは、「スキマ時間を無駄なく使える」という点だ。
例えば電車の乗り換えまでの15分間。
この程度の中途半端なスキマ時間だと面倒くささが勝ってしまい、なかなか「教材を開いて勉強しよう!」という気にはならない。
しかしスタディサプリだと細切れの時間も合計して「今日の勉強時間」として表示してくれる。
例えば1日2時間勉強すると決めていて、帰りの電車で15分サボってしまった場合、家についてから2時間丸々勉強しないといけない。
しかし電車で15分勉強しておくと、帰ってからは1時間45分の勉強で目標達成できる。
夜の15分は貴重だ。
このように、ちゃんと勉強時間を計って積み上げてさえいれば、たった15分でも意外と貴重な勉強時間に見えてきて、「教科書を開こうかな?」と思えたりするものだ。
一番大事なこと
★合格ラインギリギリを目指してはダメ★
これまで僕なりの勉強方法をお伝えしてきた。
しかしこんなことを言っては元も子もないが、合格に必要なことはたった1つに集約するのでは?と考えている。
それは、
「ギリギリ合格を目指すのではなく、余裕合格を目指して勉強をやめない。」
ということだ。
僕自身がそうだったが、勉強時間が100時間を超えてくるとかなり理解も進み、瞬殺で答えられる問題も増えてくる。
「今受けても受かりそう」という気になってくるのだ。
だが恐らく、10回受験のチャンスが有れば、「全部落ちる」ということはないにしても、「全部受かる」ほどの力はついていない。
さらに本番では、
・緊張
・前の日寝れなかった
・トイレに行きたくなって集中できない
・運悪く風邪を引いた
など、本領発揮できない事も考えられる。
だからここで勉強をヤメてはいけないのだ。
参考までに、僕の場合は100時間前後で模試は38点~42点くらいだった。
しかしそこから倍近く、185時間まで追い込んだ。
そのおかげで最終的に模試ではほぼ満点を取れるようになっていた。
それでも本番の結果は43点。
平成30年度は合格ラインが37点だったの6点の余裕があったものの、7問は間違えてしまった。
模試と比べれば86%の力しか出せなかったのだ。
仮に僕が模試で43点くらいの状態で本番に挑んでいたら「43 × 0.86 = 36.98点」で不合格になっていた計算だ。
模試で43点取れていたら十分合格ラインという気がするが、そうでもない。
意外と危ういのだ。
そして仮に不合格なら次のチャンスは1年後。
せっかく覚えたこともかなり忘れてしまうので、復習だけでもかなりの時間をかけなければならない。
だから100時間でヤメず、+85時間勉強したこと、僕は無駄だったとは思わない。
むしろ、「合格できそうかも!」と思ってからの追い込みの数十時間こそ、合否に最も影響を及ぼすポイントではないかと考えている。
宅建の勉強は受かってからが本番
宅建に合格し、実務研修を受けてみて思ったことは、「宅建合格」は実務レベルとは到底言えない。
「最低これくらいは知っておけよ!」
という程度の知識でしかないので、今後も更に勉強は続いていく。
そういう意味でも「追い込みの数十時間」は全く無駄にならない。
安心して勉強しすぎて余裕を持った合格を目指してほしい。
最後に
勉強法は正直、人それぞれ合う・合わないもあるし、勉強時間も個人差は大きい。
そもそも独学ではなくスクールに通って資格をとるほうが合っている方も沢山いるだろう。
だから僕の勉強法は参考程度にしかならない。
ただ最後に書いた「ギリギリ合格ではなく余裕で合格を目指す」というのは、万人に当てはまる合格の鉄則ではないかと思う。
この記事を読んで新たな宅建士が登場したら幸いだ。